<トミー・クームズ>
トミー・クームズは、CCMシーンで約30年に渡って活躍する大ヴェテラン。生まれは1946年5月9日、カリフォルニア州のロング・ビーチ。リトル・リチャード、エヴァリー・ブラザーズ、ザ・ビートルズを経て、スタン・ゲッツ、ジョアン・ジルベルトから大きな影響を受けます。その後も、カレッジ時代に音楽を専攻。マイルス・デイヴィス、チャーリー・パーカー、フレディ・ハバード等を愛聴し、その一方でファンク・ミュージックの持つエネルギーに魅了されたトミー・クームズは生涯のフェイヴァリット・アーティストとしてジョー・サンプルとスティーリー・ダンの名前を挙げています。

 そんな彼がプロ・デビューを飾ったのは1971年。CCMの歴史の中でも、最もエポック・メイキングな グループの一つに数えられているLove Songの一員としてです。Love Songは、それまでのクリスチャン・ミュージックが教会音楽的な旋律にメッセージを乗せ、しかもあくまでもコーラス主体だったのとは違い、いわゆるポップやロックのサウンド形態にクリスチャン的なメッセージを乗せるという、当時としては画期的なアプローチで多くの支持を集めたグループです。グループの中心人物は、チャック・ジラード−−彼は16歳の時にThe Castellsのメンバーとして全米Top30ヒットを2曲を生み出し、その後もゲイリー・アッシャーがプロデュースを手掛けたThe Hondellsの大ヒット<Little Honda>でヴォーカルを取っていたスタジオ・シーンの人気ヴォーカリスト。そのチャックから受けた影響によって、ミュージシャンとしてひと回り大きくなったトミー・クームズはグループがいったん活動を停止した1974年からCCMのレーベルMaranatha! Musicのスタッフ・プロデューサーとして主にPraiseアルバム(賛美歌集)を次から次に制作。その仕事は27年が経過した現在も続き、これまでにプロデュースしたアルバムは実に200枚とも300枚とも言われています。(その他にも、ブライアン・ダンカンが在籍したSweet Comfort Bandの1st「Sweet Comfort」をプロデュース)

 そんなMaranatha! レーベルでの手腕を買われたトミーはそこから自分自身のアルバムを作らないかと持ちかけられます。もちろん、悪い気はしなかったトミーですが、Love Song時代も基本的にはバック・ヴォーカルがほとんどだったこともあり、多少の不安もありました。しかし、コイノニアのキーボード奏者:ハーレン・ロジャースとの共同プロデュース、さらに、ロビー・デュークのプロデューサーとしてもお馴染み、ジョナサン・デヴィッド・ブラウンのエンジニアリングに助けられ、見事なまでのメロウ作品に仕上げます。1曲目のタイトル曲<Love Is The Key>の哀愁漂うメロディー・ライン、3曲目の<The Pleasure's Mine>で聴けるライトなAOR風アレンジ、英国風のインテリジェントなバラード<HidddenTreasure>、Love Song時代に書いたナンバーで、当時のメンバー2人がコーラスで駆け付けた<Singing Our Praises To Jesus>、程良いラテン色を施した軽快な<Thinkin' Of You>、クルセイダーズ風のサウンドに仕上げたというファンキーな<He's A Liar>など、聴きどころ満載の1枚は、リリース当時こそ知る人ぞ知る作品でしたが、ここ数年、CCMの名作が掘り起こされている日本のファンのアンテナに引っかかってからは、一気に価値が増大。CCMを語るときに絶対に外せない1枚として、CD化を求む声があちらこちらから上がっていました。そして、2001年夏、クール・サウンドが待望のCD化を実現。トミー・クームズ本人へのインタヴューをフィーチャーし、彼の経歴、人柄をより細かに紹介する事が出来ました。

 このアルバムの後、トミーは再びMaranatha! レーベルのPraise Albumを年間10数枚制作。また、その合間を見つけて自らのPraise Band を結成。アルフィー・サイラス、ボブ・ウィルソン(ex.Seawind)ほかの豪華なメンバーと共にツアーを行い、ライヴCD「Lift Up His Name」を2000年に発表しています。