<クリス・イートン>
 1958年9月16日イギリスのウエスト・ミッドランズ生まれ。小さい頃からビートルズ(特にポール・マッカートニー)や、<Candle In The Rain>や<Your Song>といった初期のエルトン・ジョン、そしてその後はビリー・ジョエルの音楽に惹かれる。また、イギリス人らしく、イエス、ピンク・フロイド、ジェネシス..といったプログッレシヴ・ロック系のアーティストからも影響を受けています。

 8歳からクラシック・ピアノを習い、14歳から作曲もスタート。10代の終わりには早くも100曲を越す作品を作曲。78年頃に地元のCCMアーティストに曲を提供し、その彼のバンドにキーボード&コーラスで参加。約半年に渡ってイギリスをツアーします。その時に出会ったのが大御所クリフ・リチャードで、クリスの作品を気に入ったクリフは彼に作品を送るよう依頼。数え切れないマテリアルの中から自信のある5曲をセレクトし、クリフに送ったものの何の反応もなく、1年半経った後にようやく秘書から連絡が。送った5曲のうち<Summer Rain>と<Lost In A Lonely World>の2曲が1981年のアルバム「Wired For Sound」に収録され、クリス・イートンの作曲家としての門戸がようやく開かれます。クリフ・リチャードにとってゴスペル・タッチの曲を歌うのはこれが初めてだったとのこと。クリフの次のアルバム「Now You See, Now You Don't」にもクリスは3曲を提供。ここからトラディショナルな詞にクリスがメロディーを付けた<Little Town>が全英で最高11位まで上がるスマッシュ・ヒットを記録しています。

 クリスの才能を認めたクリフ・リチャードはクリスを自分の音楽出版社と契約し、彼の作品をアメリカの市場にも紹介。この最も初期の作品がエイミー・グラントの1983年のクリスマス・アルバムであり、そこには<Little Town>のクリスマス・ヴァージョンを収録。またそれに続いて、エイミーの次のアルバム「Unguarded」にも2曲を提供し、ナッシュヴィルでのコネクションを確実に拡げていきます。その他にもジャネット・ジャクソン他、いろいろなポップ・シンガーに曲を提供するようになりますが、一方では、学生時代からの友人マーク・ウィリアムソンとバンドを結成。約4年間に渡って活動を続け、ここではキーボードとヴォーカルを担当。不定期ながらイギリス国内をツアーしています。そのバンドでは1980年に「Get The Drift」(Chapel Lane)、そして84年にMark Williamson Band名義で「Missing In Action」(Myrrh)と2枚のアルバムをリリース。また、1stの曲をリミックス、再編集したアルバムが1982年にアメリカでもStar Songからリリースされていますが、この時はMark Williamson BandではなくLyrixという名義で、アルバム・タイトルも「Songs From The Earth」に変わっています。

 バンド解散後、クリスは本格的なアメリカ進出を考え、エイミー・グラントのマネージメントを手掛けるマイク・ブラントンとのコネクションからReunionとソロ契約を結び、86年に初のソロ作「Vision」を発表。ブラウン・バニスター&ジャック・ジョセフ・プイグをプロデュースに迎えたこのアルバムはLA、ナッシュヴィル、ロンドンの3カ所でレコーディングが行われ、ロビー・ブキャナン、ダン・ハフ、マイケル・ランドウ、トミー・ファンダーバークからピノ・パラディーノ、フィル・パーマーまで英米のトップ・セッションマンが大挙参加。当時のAORファンから大きな注目を集めています。

 その後再び作家活動に専念。インペリアルズ、マイケル・イングリッシュ、ファースト・コール、クリスタル・ルイスを始め、CCM界の人気シンガーに次々と曲を提供。セッション・シンガーとしても積極的に活動を続け、迎えた95年。今度は、CCM界の最大手の1つSparrowから9年振りのソロ作「Wonderful World」をブラウン・バニスター&クリス自身のプロデュースで制作。ここでも見事なポップ・ワールドを披露しています。そして97年に、今度はイギリスのAlliance Musicから3枚目のアルバム「Cruisin'」を完全なセルフ・プロデュースで制作。トラッドな雰囲気などアイルランドの香りも漂わすなど新鮮で親しみやすい作品に仕上げています。このアルバムは1998年に「What Kind Of Love」というタイトルでアメリカでもCadenceから発売されますが、全くの同内容ながら、ジャケットも変えられています。

 2000年になっても作品依頼が絶えないクリスはこのところ年に4〜5回ナッシュヴィルに行っては毎回精力的にセッションをこなしています。ここ1〜2年だけを見ても、エイミー・グラント、ポイント・オブ・グレイス、レベッカ・セント・ジェイムス、アヴァロン、ニコール・ノードマン、ジャッキー・ヴェラスカス、ザ・ダーリンズ、レイチェル・ランパを始めとした数多くのアーティストが彼の作品をレコーディング。そのメロディーメイカーぶりは、全く衰えることを知らないどころか、21世紀になり、さらなる高い評価が下されることでしょう。