<ロス・ロボトミーズ>
 <History>

 ロス・ロボトミーズは1980年代中盤に、デヴィッド・ガーフィールド、スティーヴ・ルカサー、ジェフ・ポーカロ、レニー・キャストロ、ネイザン・イースト、ブランダン・フィールズの6人で結成され、メンバーのスケジュールの合う限り、毎週:火曜日にThe Baked Potatoに出演。ロック・スピリッツ溢れるハイ・パワー・フュージョンを展開していました。グループ名はレニー・キャストロのアイデアによるもので、そこにはCrazy Peopleというような意味合いが込められている、とのこと。("lobotomy"という単語自体は「脳前葉切除術」という意味だそうです) そして、それを元に、ジェフ・ポーカロが描いたのが、グループのシンボルともなる、“手術後の”頭骸骨。1stアルバム「Los Lobotomys」のアメリカ盤ジャケットに使用され(日本盤はブックレットの中に封入)、今回のライヴ・アルバムでも、フロントを飾る、あの、おどろおどろしい頭骸骨です。
 毎週のようにギグを重ねた彼らはやがてアルバムの制作に取り掛かり、デヴィッド・ガーフィールドのプロダクション:Creatchyを通して1989年に「Los Lobotomys」を発表。まず、日本で最初にお披露目されたそのアルバムは、創美企画から発売され、この時、正式にCreatchyレーベルもスタート。全員が多忙を極めていることからメンバーの出入りは激しく、1stアルバムの時点でベースはネイザン・イーストからNYのウィル・リーにチェンジ。また、正式メンバーのジェフ・ポーカロに加えて、ヴィニー・カリウタ、カルロス・ヴェガの2人も数曲でドラムスをプレイ。また、ジョー・サンプルも2曲にゲスト参加するなど様々な話題を呼び日本のロック&フュージョン・ファンから大きな注目を集めています。
 その後もThe Baked Potatoを中心としたギグは続いていきますが、それから5年後に、今度は、ルーク、ガーフィールド、サイモン、ペーニャ、この4人を中心に2枚目のアルバムを制作しますが、「Candyman」と題されたその作品は、日本、及び、欧州ではスティーヴ・ルカサーのソロ名義で発売され、アメリカでのみロス・ロボトミーズの名義でリリースされることになります。(しかも1曲ボーナス・トラック付き)
 その年1994年、4人は欧州を約4ヶ月間ツアーし、各地で絶大なリアクションを受けますが、その中でも最も盛り上がったひとつ、デンマークはミッドフィンツで行われたロック・フェスティヴァルに於ける演奏が2004年末に目出度くCD化されました。
 実はこのライヴ盤には面白いエピソードが2つあります。ひとつは、そのフェス自体のこと−−10時間以上に渡って行われた大規模なフェスティヴァルで、終盤にはエアロスミス、ピーター・ゲイブリエル、という大物が登場したそうですが、ロス・ロボトミーズはそのフェスのオープニング・アクトとしてステージに登場。しかも、その時間が昼の12時、ということで、メンバーにとっては朝イチでギグを演っているような不思議な感覚があった模様−−このすさまじい演奏からは全く想像できませんが−−。
そしてもうひとつの裏話は、この録音テープのこと。実は、メンバー自身はライヴ・レコーディングをする予定はなく、普段の感覚でいつも通りのプレイを演じていました。しかし、当日出演する他のバンドがライヴを録音する、ということで、そのテストも兼ねて、ロス・ロボトミーズの演奏時もテープ・レコーダーを回していた、というわけです。しかも、そのテープは終演後直ぐに渡されたのではなく、3年位前に突然デンマークから送られてきた、とのこと。それを聴いたガーフィールドは、そのクォリティを高く評価し、ライヴ盤として発表することを計画しますが、実は、ロス・ロボトミーズはロス・ロボトミーズで、1999年にハリウッドのThe Baked Potatoで行ったギグをライヴ化する予定があり、最終的には、94年のデンマーク公演6曲に94年のThe Baked Potatoギグ2曲を加えた全8曲入りとしてアルバム化することに決定。それが、2004年、ようやく発売された、というわけです。
 ライヴ・アルバムはガーフィールドとペーニャの2人が最終的なプロデュースを行い、エディット&マスタリングはジョン・ペーニャが担当。実にダイナミックでクリアなサウンドを届けてくれます。
 演奏曲目は、1曲目から6曲目までがデンマーク公演で、7&8曲目がThe Baked Potatoに於けるギグ。1989年の「Los Lobotomys」からのナンバーは1曲目の<Smell Yourself>と4曲目の<Dismemberment>の2曲だけで、残りは全て94年の「Candyman」に収められていたナンバーです。6曲目の<The Bomber>は、ジョー・ウォルシュの曲ですが、これは、彼がジェイムス・ギャングに在籍していた1970年代初頭の作品。スティーヴ・ルカサーにとってのギター・ヒーローというと、ジミ・ヘンドリックスとジェフ・ベック、この2人の名前が直ぐに挙がってきますが、実はその2人に並ぶほど影響を受けていたのが、このジョー・ウォルシュだということです。
 プレイに歌に、思いっきり弾けるスティーヴ・ルカサー。ここでの熱演はあの名作「The Baked Potato Super Live !」(Greg Mathieson Project)にも負けない後世に残るものだと言って間違いないでしょう。そう、「ルークに付いてきて好かった!」誰もがそう実感するはずです。