<マーシャ・マラメット>
 NYブルックリンの生まれ。8歳からピアノを始め、10代前半で出会ったバーブラ・ストライサンドの歌声に感銘を受け、「将来、バーブラに曲を提供できるような作曲家になる」ことを心に誓う。
 ハイ・スクール卒業後、シアター・スクールに通い、幾つかのレッスンを受けるが、そのうちのひとつがブローウエイ・ミュージカルの授業で、その時の先生があの有名なミュージカル「Hair」のディレクターを務めた人だった。彼は、直ぐに、マーシャの才能を認め、彼女を有名なアレンジャー&コンダクター:リー・ホールドリッジに紹介。そして、リーが今度はプロデューサーのRobert Lissaurに彼女を紹介。そのロバートの口利きもあり、1969年にマーシャ・マラメットは初めてのソロ・アルバム「Coney Island Winter」をDeccaからリリースする。このアルバムは、専門家筋から特に高い評価を受け、「西のJoni Mitechell、東のMarsha Malamet」と並び称する人も少なくなかった。彼女自身、その作品に関しては
『"Pop Art Songs"って表現しても好いんじゃないかしら。当時、私は本当に他の誰とも違うサウンドを作っていたから。R&BやR&Rではないし、かと言って、劇場音楽っぽすぎるわけでもないし。どのカテゴリーにもあてはまらなかった。だから、敢えて"Pop Art Songs"と呼ぶのが一番なの』と、力強く語っている。
 1973年に今度はマンハッタンに引っ越すと、音楽仲間もどんどんと増えていくが、そんな中、出会った1人がデヴィッド・ラズリーだった。彼はいろいろなヴォーカル・グループに参加していたが、そのメインとなる3人組Rosieの1stアルバム「Better Late Than Never」(1976年RCA)でマーシャは2曲を共作。そのデヴィッド・ラズリーがLAに移った後も彼と曲を書くべく、年に2回くらいLAに出向き、そうしているうちに音楽出版社の大手Irving/Almo Musicと専属の作家契約を結ぶことになる。

 1980年代後半からはジュディ・コリンズ、エイミー・キーズ…と、徐々に作品がレコーディングされるようになり、90年代に入るとパティ・ラベル、チャカ・カーン、シーナ・イーストン、ダイアナ・ロス、ルーサー・ヴァンドロス…と、ビッグ・ネームが次々にマーシャの曲を取り上げるようになる。極めつけは1997年。小さい頃の憧れだったバーブラ・ストライサンドがアルバム「Higher Ground」でマーシャの作品<Lessons To Be Learned>を録音し、30数年来の夢がついに叶うのだった。
 その後も、フェイス・ヒル、ジェシカ・シンプソン、エターナルといった人気アーティストがマーシャの曲をレコーディング。女性ソングライターの中でも堂々のトップ・クラス入りを果たすのだった。

 そんなマーシャ・マラメットは34年振りとなる新作を2003年の春に発表する予定だが、それよりも一足早く、クール・サウンドのためにコンパイルしてくれたのが、今回のアルバム「You Asked Me To Write You A Love Song」だ。他のアーティストへのデモ・トラックとして書き貯めた作品を中心に、ピーター・アレンのアルバムで歌われたのを始め、すでに、20以上のカヴァー・ヴァージョンが存在する<Love Don't Need A Reason>のセルフ・カヴァー他、全10曲を収録。知的なソプラノ・ヴォイスと、親しみやすくかつハイ・センスなメロディーを響かせ、100%マーシャ・マラメットなサウンドを心行くまで、届けてくれる。